あかりさんと私と先輩と僕

このエントリーはTwitterアカウントの「あかりさんと私」( @akarisanto )に対する言及です。

「あかりさんと私」のアカウントイメージを損なう可能性があるので、それが嫌な方はブラウザバックして下さい。
「あかりさんと私」を知らない人は、そういうアカウントがあるので試しに見てみてください。人気のあるツイートを特選したのであろうモーメントを貼っておきます。
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よろしくお願いします。

以下本題

1.「先輩と僕」との出会い

皆さんは「先輩と僕」というアカウントをご存知だろうか?
このアカウントは、ラブライブの二次創作ショートショートを投稿するアカウントで、「僕」の視点で「にこ先輩」を中心とする、ラブライブの登場人物達の日常を書いた手動botだ。

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このアカウントは現在殆ど更新が停止しているが、2013年3月頃からほぼ毎日、100日の間(三ヶ月以上も!)投稿されていた。丁度ラブライブ1期が放送されている最中に活動開始した事になる。(そしてその後にも不定期ながら更新され、特に毎年の7月22日にはほぼ必ず更新されている、この日は矢澤にこの誕生日だ)
私が「先輩と僕」を見つけたのがリアルタイムだったかは覚えてはいないが、とにかく見つけた瞬間にフォローしてすぐさま全てのツイートを遡った記憶がある。
「僕」という「にこ先輩」を想っている架空の人物の視点から書かれる世界は不条理で、ユーモラスで、凄まじいセンスに溢れていた。



私はカフカ安部公房のような不条理でシュールな、それでいて何処かユーモラスな世界観が好きなのだが、それらに共通したものを「先輩と僕」から感じた。
妖怪や妖精、呪いといったファンタジーな要素が何の説明もなく日常の景色に登場したり、人物が無機物や動物に変身する超現実的なモチーフが導入されおり、その上であくまでもキャラクター達の日常的な空気を損なってはいない。そしてショートショートとして文章が破綻せず140文以内で成立している。
見事な手腕で、初めての文章体験だった。探せば類似したアカウントがあるのかも知れないが、2013年当時の私は「先輩と僕」との出会いに打ちのめされたのだった。


2.「あかりさんと私」を作る

時は経ち2018年。ふとした時に「先輩と僕」のツイートがRTされてきた。
久しぶりにツイートを読んだのだけど、依然として「先輩と僕」は面白かった。と、同時に、もう5年も前に(たまに更新されているとはいえ)活動終了してしまった事に対する、虚しさみたいなものが心に去来した。

「"先輩と僕"をもっと見たい」という感情が「あかりさんと私」を作った理由だ。

好きだった作品が突然打ち切りになってしまった時、「続いてたらどう終わったんだろう」と思う気持ちとか、連載が終了した作品のサイドストーリーや描かれなかった余白を夢想する事とか、「自分だったらこう書く」という二次創作の考えと同じように、私も「先輩と僕」の続きを勝手に書こうと思った訳だ。そもそも「先輩と僕」は「ラブライブ」の二次創作なので、「あかりさんと私」は二次創作の二次創作になる。こういうったものに名前はついているのだろうか?


3.「あかりさんと私」を始めてみての所感

・私はコンテンツを享受するだけの無産オタクで、二次創作物を作った経験、またショートショートとはいえ物語を書いた経験もほぼ無いので非常に苦労した。元である「先輩と僕」のツイートを何度か読み込み、文章の構造やポイントを確認した。

・当初の目標は1ヶ月、30tweetは続け、フォロアーを1000人獲得することとしていた。結構早い段階でフォロアー1000人を越え、今となっては「先輩と僕」より増えていて大変ありがたい(F/F比に関しては比べるべくも無いが、僕としては折角なら多くの人に見てもらいたかったので積極的に自分からフォローしていった。フォローしていただいた方々、ありがとうございます)

・100個分ショートショートのネタを考えるのは本当に辛く、本当に辛かった(本当に辛い)

・「先輩と僕」のニュアンスははほのぼのシュール日常物といった感じだが、「あかりさんと私」はサイコホラー日常物といった感じがある。
これは単純に、似た様式から異なる筆者の個性が出た結果であると思う。(ここら辺の違いを比較していた人もエゴサで数人見かけた、その通りだと思います)
前述したように「先輩と僕」はファンタジー的なモチーフを多用していたし、基本的にキャラクターを殺したり過度にシリアスな描写は避けいてる印象がある。ここがほのぼのさを保持する要因と思う。私は死も含めてユーモアとしたのでバンバンあかりさんが死んでしまったが、(次の日のツイートでは当たり前に生きて存在してるのも併せて面白いと思う)生理的に不快な表現は「先輩と僕」と同じく避けていたつもりだ。ただ、バッドエンドや寓意的な内容はカフカ等をオマージュしているのもあり、より多いと思う。

カフカ安部公房が小説としては好きだし、ツイッターではキム・ギニョン岩倉文也に書いている時ハマっていたので、要素を取り入れようと努力していた。「先輩と僕」と違い「あかりさんと私」にパワーワードの羅列ネタが多いのはここらへんも関係する。

・私はラブライブを知らないのだが、それでも「先輩と僕」は面白いと思った。同じく「あかりさんと私」のフォロアーで、ゆるゆりは知らないがツイートは面白いと言う人が散見されたのは嬉しかった。やっぱりこの様式は面白さとしての強度があると思う。

・「あかりさんと私」の版権元、元ネタを"ゆるゆり"に規定したのは、勿論、私がゆるゆりという漫画が好きな事が最大の要因だが、元がギャグテイストの1話完結型なのでショートショートの様式と相性が良いと言うのもある。
京子先輩やちなつさんというキャラは、狂言回しやオチに使いやすいキャラだし(原作のゆるゆりにおいても同じ使われ方をしているのでやっぱり便利なんだと思う)、あかりさんも弄られキャラなので、トラブルに巻き込まれたり不条理な仕打ちをされるキャラとして違和感が少なく、原作を知ってる人もイメージがしやすいのではないかと思った。

・このブログを書いている時点でフォロアーは2700人に迫ろうとしていて、結構前にアニメ放送も終了したゆるゆりという元ネタで、文字だけの二次創作botという点を鑑みれば上出来すぎる反響だと、とても満足している。
先輩と僕が更新されていた頃(もっと子細には2011年の前後)は、今とTwitterの使われ方も違っていたように思う。ネタツイートやシュールで不謹慎、ブラックなジョークがTLを埋め尽くしていて、ふぁぼったーやFavstarをチェックすれば秀逸で面白いツイートをたくさんdigる事が出来た。今はあまり不謹慎な事を呟けば自警団が飛んでくるし、ネタツイートよりも画像が伴った時事ネタや言論に関するツイートが多く、ふぁぼ文化やネタ文化も落ち着いたように思う。favstarがサービスを終了するのも象徴的だ。ある意味ではTwitterの使われ方が真面目になったなあと思う。

・自分が面白い/出来が良いと思ったツイートと、RT/いいねが多くなされるツイートは結構乖離しており、創作とは狙って出来るモノではないのだなと思った。

・かなりしつこくエゴサしてて、RTしたフォロアーの直後のツイートで言及とかされてないか結構チェックしてた。言及があると嬉しいものだ。

・RT/いいねと書いた当人との評価が特に合致し、好評だったのはコレ。内容のシュールさとあかりさんを思う「私」の情緒を両立出来るとポイントが高い。あとコレもワードチョイスが気に入っている。

99ツイート目に「あかりさんと私」の要素がすべて詰まっている様に思う。これが書けた事には大いに満足している。

・もし余裕があったら、後でこの記事に各ツイートのオマージュ元や注釈のあるものを追記したい。例えばコレ梶井基次郎の「Kの昇天」が元ネタにある。青空文庫で無料で読めて、非常に短く面白いのでオススメである。

4.この記事について
謎めいた物に対するネタばれは白けてしまってあまり良いものではない。最近ではAVのクレーム( @AVnokureemu )が自身の出演するイベントを唐突に宣伝し、その謎めいたアカウント性とのギャップも相まって顰蹙を買っていたのが記憶に新しい。「あかりさんと私」も作者不詳、意図も不詳、内容も(読む人によっては)意味不明なアカウントで、それに対するネタばらしのようなこの記事は、シラける人はシラけてしまうと思うし、私もシラけるかもしれない。
しかし、私のマニアックなオタク気質は、同時に「先輩と僕」の作者が誰なのか知りたいし、どういう意図でアカウントを作ったのか知りたいし、botを更新していた時の思いなども知りたいと思ってしまう。そして、「あかりさんと私」に対しても、そのような気持ちを持つ物好きな人が1人くらいはこの世にいると思う。この記事はその一人の為だけに書いている。なのでこの記事を「あかりさんと私」のアカウントでシェアしたり過度に話題に出したりはしないつもりだし、これを読んだ人もそういった気持ちでいて欲しい。目聡くいいね欄もチェックしているような人に対するサービスだ。


5.「先輩と僕」の作者の方へ
本当にリスペクトしています。「あかりさんと私」は「先輩と僕」のクオリティには及びもしません。センスが到底敵わなかったです。もしこの記事や「あかりさんと私」を認知して頂けましたら是非DM等で連絡頂けると幸いです。とても面白いものを書いて頂けた事に感謝を伝えたいです。


6.まとめ
私はあかりさんのことをとても大切に思っていたし、私は先輩と僕の事を大切に思っていた。
つまり、「『あかりさんと私』と『先輩と僕』と私/僕」なのである。


つまり、「『あかりさんと私』と『先輩と僕』と私/僕」なのである。ってどういう事?